「ホスピタリティに繋がる三段階のサービス」

今回は実践編として、サービス行動を三段階に分けてお話しします。
行き当たりばったりのアクションは安定したサービスレベルを維持することは出来ませんので、サービスの行動を分析した上で組み立てていく必要があります。

第一段階のサービス:
当たり前であり、当然しなければいけないサービスで、店舗コンセプトに合った「マニュアル」に添ってお客様に提供するサービスです。 「マニュアル」の存在意義とは何か? 店舗にとっても、スタッフにとっても重要な位置付けであることは間違いありません。

① 店舗経営コンセプトを現場に反映するもの
② 初心者にとっての明確な指針になり、短時間にスキルアップが可能となる
③ マニュアルに添って教育することで、指導に一貫性が保てる

などがアニュアルの重要なポイントです。 店舗として平均的なサービスを提供する為、そして初心者が早く平均的なスキルになる為の手助けになるでしょう。
しかし、私は、マニュアルはあくまで平均的なサービスを実行する為の指針とだけ考えるようにしています。 この段階ではお客様からのクレームは少ないですが、大きな満足感は与える事ができません。


第二段階のサービス:
お客様の満足度を高めるサービスで、「気くばり」が含まれた、良い印象を与えるサービス。 カスタマー・サティスファクション(顧客満足)につながる。
マニュアルに無いリクエストや、マニュアルを超えた判断が必要な場合に気の利いた対応が出来る段階です。 
これが出来る為には、対応能力など、個人スキルが高くないとアクションが成功につながりません。

例を挙げると
① ベジタリアンや食材のアレルギーにその場で対応する
② マニュアルではパンの提供はスープと同時だが、状況を見て前菜と合わせて提供する(上司の指示を仰がなくてもできる)
③ 誕生日などお祝いの席予約には、サプライズで何かプレゼントする

など、ちょっとした気遣いがマニュアルに無くても出来る、しかも、上司の指示が無くても出来る為には、現場への権限移譲が必要になってきます。


第三段階のサービス:
お客様がして欲しいことを真剣に考え、お客様が求めている要望を超えたサービス。
感動のサービスとはこの段階です。お客様からリクエストが無くても、気が付くレベルでなくてはなりません。

例えば
① カップルが乾杯していた。通りすがりに結婚記念日のお祝いらしいと気が付いた場合など、最後まで聞かなかったふりをしながら、最後にメッセージプレートを添えたデザートを用意する(第二段階のサービスとの違いを考える)
② 初めの料理を頂くとき、ナイフフォークを右左反対に持ち替えていたのに気付き、次のセットはナイフを左に置いてあげる(左利きだった)
③ ホテルのレストランで食事をされたお客様が、アルコールを嗜まないと分かった場合、そのお客様が部屋に帰ったら、冷蔵庫のアルコールは全て撤去されていて、好みのミネラルウォーターが補充されている自分の親友や家族に接する以上の気持ちをこめて、お客様に最善の試みを行う。

単なるサービス提供ではなく、第三段階につながるようなサービスを提供することが、お客様の安心感や、癒しにつながり、お客様の心のケアにつながるわけです。

三段階のサービスの話をセミナー等でしますと、「うちの店は高級店じゃないから」とか「スタッフが少なくて」などのご意見も多いのですが、カジュアルから高級店、コーヒーショップであっても、其々に合った「三段階」があるわけですね。

大切な事は、
① マニュアルに縛られない
② マニュアル以外の行動を叱らない事(お客様の為にしたことであれば)
③ マニュアル外の事例が起こった場合の対応をマニュアルに追加して、高度なマニュアルに進化させる

の三つに大きく集約されます。

問題は、ミスやクレームを恐れて、「余計なことはするな」と指導する上司の存在です。マニュアル以外の対応が怖くて出来ないスタッフが多くなります。
スタッフには勇気をもって取り組んで頂き、その責任は上司がとる位の組織でなければ今後勝ち抜いては行けないでしょう。
リスクはあっても、新しいサービス価値を探してゆくオーナーや店長であって頂きたいと切に願います。

次回からは「ホスピタリティ」そのものに迫ってお話します。
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